サクリファイス
スタッフ
監督:アンドレイ・タルコフスキー 製作:カティンカ・ファラゴ
キャスト
エルランド・ヨセフソン スーザン・フリートウッド アラン・エドヴァル グドルン・ギスラドッティル スヴェン・ヴォルテル ヴァレリー・メレッス フィリッパ・フランセーン トミー・チェルクヴィスト
発売日: 2010-09-25
解説
言葉を話せなかった少年が話せるようになるまでの1日を、その少年の父の行動を通して描く。製作はカティンカ・ファラゴー、エグゼキュティヴ・プロデューサーは、アンナ・レーナ・ウィボム、監督・脚本は「ノスタルジア」のアンドレイ・タルコフスキーで、これが彼の遺作(86年死去)となった。撮影はスヴェン・ニクヴィスト、音楽はJ・S・バッハ(マタイ受難曲BWV244第47曲)他スウェーデン民族音楽と海音道宗祖の法竹音楽、美術はアンナ・アスプ、編集はタルコフスキーとミハウ・レシチロフスキーが担当。出演はエルランド・ヨセフソン、スーザン・フリートウッドほか
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ストーリー
スウェーデンの南、バルト海をのぞむゴトランド島。誕生日を迎えたアレクサンデル(エルランド・ヨセフソン)が息子の少年(トミー・チェルクヴィスト)と枯れた松の木を植えている。かつて「白痴」のムイシキン公爵の役等で大成功をおさめた名優だったアレクサンデルは今は評論家、大学教授として島で静かに暮らしている。「昔、師の命を守って3年間、若い僧が水をやり続けると、枯木が甦った」という伝説を子供に語るアレクサンデル。そこに郵便夫オットー(アラン・エドヴァル)が祝電をもってやってくる。無神論者というアレクサンデルに、オットーは、ニーチェの永却回帰の話をもちだす。喉の手術... スウェーデンの南、バルト海をのぞむゴトランド島。誕生日を迎えたアレクサンデル(エルランド・ヨセフソン)が息子の少年(トミー・チェルクヴィスト)と枯れた松の木を植えている。かつて「白痴」のムイシキン公爵の役等で大成功をおさめた名優だったアレクサンデルは今は評論家、大学教授として島で静かに暮らしている。「昔、師の命を守って3年間、若い僧が水をやり続けると、枯木が甦った」という伝説を子供に語るアレクサンデル。そこに郵便夫オットー(アラン・エドヴァル)が祝電をもってやってくる。無神論者というアレクサンデルに、オットーは、ニーチェの永却回帰の話をもちだす。喉の手術をしたばかりの少年は、言葉が言えない。親友の医師ヴィクトル(スヴェン・ヴォルテル)を案内して妻のアデライデ(スーザン・フリートウッド)が来るが、アレクサンデルは子供との散歩を続け独白をくり返す。ヴィクトルのプレゼントのルブリョフのイコン画集にみとれるアレクサンデル。妻は、舞台の名声を捨てた夫に不満をもっている。娘のマルタ(フィリッパ・フランセン)も、小間使のジュリア(ヴァレリー・メレッス)も魔女と噂される召使いのマリア(グドルン・ギスラドッティル)も、夫婦の不仲には慣れている。急に姿が見えなくなった子供を探していたアレクサンデルは、突然失神する。白夜の戸外。アレクサンドルは、自分の家とそっくりな小さな家を見つける。通りかかったマリアが、自分で作ったのだという。子供は2階で眠っていた。アレクサンデルが階下へ降りると、テレビでは核戦争の非常事態発生のニュースを報じているが、途中で通信が途絶えた。電話も電気も通じない。パニックに陥る人々。いつも自分の願望とは逆な結果に終わってきたと嘆くアデライデ。子供に気を使う小間使のジュリアを、感謝の気持ちを込めて抱き寄せる彼女。アレクサンデルはヴィクトルのカバンの中にピストルをみつける。隣室ではヴィクトルを誘って服をぬぐマルタ。アレクサンデルの口から、初めて神への願いが発せられる。「愛する人々を救って下さい。家も、家族も、子供も、言葉もすべて捨てます」と誓う。ソファーに眠り込んだアレクサンデルをオットーが起こしにくる。そして彼は、マリアの家に行き愛せ、という。マリアを訪れたアレクサンデルは、彼女に母の思い出を話し、抱き合った。朝、目ざめたアレクサンデルは、光の中、神との契約を守るべく、自らを犠牲に捧げる儀式をはじめた
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待ってました!!!
さて、特典ディスクはクリス・マルケル監督の「アンドレイ・アルセニェヴィッチの一日(55分)」(Une journe d'Andrei Arsenevitch )(1999)です。クリス・マルケル監督は第2次世界大戦中レジスタンスに参加し、その当時から「メモ魔」と呼ばれていました。彼は後に第3次世界大戦をテーマにしたSF短編映画「ラ・ジュテ」(1962年)で国際的評価を得ています。メモ魔の力量を生かした「アンドレイ・アルセニェヴィッチの一日」はタルコフスキー監督を記述した作品です。55分作品のようですが、紀伊国屋さんの特典ディスクでは97分になっており、42分長いことから、その他の特典も付いている可能性が高く、楽しみにしています。
本編の「サクリファイス」ですが、核の恐怖や影響を描いた作品では、出色のものです。アニメーション映画「風が吹くとき」も核の恐怖を扱った作品ですが、それとは違った恐怖があります。自分を犠牲にすることで、愛するものを守りたいという気持ちは、万人が持つ心理かもしれません。その普遍性を美しい映像で紡いでいます。タルコフスキー監督の遺作です。未見の方は是非!
核戦争が勃発したことを知り
すでに何度も観ている作品なのですが、今回もまたタルコフスキーの世界に満たされました…。
商品の仕様もとても良かったと思います。
特にジャケットデザインが嬉しい。生命の樹を植えるシーンはこの映画を象徴していますから…。
(このメーカーのDVDは少々値がはりますが商品は良いものが多く好感が持てます。 I●Cからの商品も見習って欲しい。『ストーカー』のデザインなど泣けてくる。似たような価格でもこのメーカーの商品には解説の冊子も付いてくるし、できればこのメーカーで出し直してくれないだろうか…。と思ってしまいます)
特典ディスクでは、タルコフスキーが終盤の驚異的な長回し(家が燃えるシーン)を演出する姿がを見ることができました。妥協なく取り組みながらも快活でときには《笑顔》も見せる姿が意外でした。
思いつめた深刻な映画…というのが本作の印象だったのですが、それだけでなく『ストーカー』や『ノスタルジア』での内省的なスタンスから未来への希望(いささか逆説的ではあるのですが…)といった意味を含んでいったのがこの映画なのかもしれない…。タルコフスキーの姿を観て(自分の中で)すこしまたこの映画の解釈が広がったように感じます。
そのほかタルコフスキーが息子を再開する場面や、病床から編集の指示しているシーンなどもあり、印象的で興味深いディスクでした。
全体的にみて納得できる良い商品だと思います。今回の再発売に感謝しています。
再発売に感謝
「映画をどの芸術にも負けない域まで高める」と言う監督の意思がここでも強く感じられる作品で、どの場面も絵画を鑑賞しているようで味わい深い。
まるでシリアスで哲学的な舞台劇を見ているかと思えば、ここという場面で男女の空中浮揚を見せてくれたり、日本への思慕が語られたり、興味の尽きない作品です。
もっともっと映画を撮りたかった監督の最期の作品になりましたが、「人生という舞台で自分は何を演じているのか」、「人のために我が身を捧げることができるのか」という問いかけとともに最高の一作を我々に残していってくれました。
特典CDでは、この作品の撮影裏話や、代表作の振返りが、息子との再会を果たした1日とともに語られており、これも貴重な記録です。
長年待った甲斐がありました。