マイ・ブラザー
スタッフ
監督: ジム・シェリダン 脚本: デヴィッド・ベニオフ
キャスト
トビー・マグワイア ジェイク・ギレンホール ナタリー・ポートマン サム・シェパード メア・ウィニンガム ベイリー・マディソン テイラー・ギア キャリー・マリガン
発売日: 2011-02-02
解説
2004年のデンマーク映画「ある愛の風景」を「マイ・レフトフット」のジム・シェリダン監督がリメイク。戦争によって引き起こされる家族の崩壊と再生を描く。出演は「スパイダーマン」シリーズのトビー・マグワイア、「ゾディアック」のジェイク・ギレンホール、「ニューヨーク、アイラブユー」のナタリー・ポートマンなど
...続きを読む
ストーリー
サム(トビー・マグワイア)とトミー(ジェイク・ギレンホール)は2人きりの兄弟だが、対照的な人生を送っていた。アメフトのスター選手として学生時代を過ごした兄のサムは、チアリーダーのグレース(ナタリー・ポートマン)と結婚、2人の娘に恵まれる。その後、米軍大尉として功績を残し、人望も厚い男だった。一方、弟のトミーは、長年定職にも就かず、挙句の果てに銀行強盗で服役する。トミーの出所日、サムは数日後に戦地への出発を控えていたが、車で弟を迎えに行く。だが、出所したトミーの居場所はどこにもなかった。元海兵隊の父・ハンク(サム・シェパード)は厄介者の次男に辛辣な言葉を投... サム(トビー・マグワイア)とトミー(ジェイク・ギレンホール)は2人きりの兄弟だが、対照的な人生を送っていた。アメフトのスター選手として学生時代を過ごした兄のサムは、チアリーダーのグレース(ナタリー・ポートマン)と結婚、2人の娘に恵まれる。その後、米軍大尉として功績を残し、人望も厚い男だった。一方、弟のトミーは、長年定職にも就かず、挙句の果てに銀行強盗で服役する。トミーの出所日、サムは数日後に戦地への出発を控えていたが、車で弟を迎えに行く。だが、出所したトミーの居場所はどこにもなかった。元海兵隊の父・ハンク(サム・シェパード)は厄介者の次男に辛辣な言葉を投げつけ、グレースと娘たちも彼への嫌悪を隠そうとしない。トミーが唯一心を開くのは、母親を亡くし、寂しい子供時代を共に支え合ったサムだけであった。ところが、サムが戦地へ旅立って間もなく、サムの一隊がアフガニスタンで撃墜されたとの知らせが届く。現実から逃げるかのように酒に溺れるトミー。そんな彼は次第に、兄が何よりも大切にしていたグレースと娘たちを、自分が支えなくてはと思い始める。以前からグレースが使いづらいと嘆いていたキッチンのリフォームを進めるうちに、娘たちは徐々に笑顔を取り戻し、最初は迷惑そうだったグレースの気持ちも救われていく。グレースの誕生日にキッチンを完成させてからも、トミーは手直しを口実にグレースたちを訪ねる。そしてある夜、初めて本音を語り合ったトミーとグレースはどちらからともなく唇を重ねるのだった。罪悪感を覚えながらも、互いに惹かれていく2人に、ある日一報が届く。サムが生きていたのだ。グレースやトミーたちは、空港に降り立つサムの痩せ細った姿に驚きながらも再会を祝う。だがサムは、もはや以前のサムではなかった。突然わけもなく激怒しては、娘たちを脅えさせ、やがて彼は、執拗にトミーとグレースの仲を疑い始めるのだった
...続きを読むPR
父の祈りを
サムは、戦地での恐怖の体験からまるで別人のようになってしまう。彼は、もともとプロの軍人であるから、人を殺すことを学び、それに習熟しているはずである。だけど、そうした能力を極限的に発揮せざるを得ない限界状況に追い込まれたとき、人間はどうなるのか? サムのPTSDは限りなく深いように思えます。友情はむろんのこと、夫婦やや兄弟との関係は、意味を持つのか?
ある意味で「狂って」行くサムという人物をトビー・マグワイアは、鬼気せまる演技で演じています。それは、へたをするとスリラーになってしまうぎりぎりの演技。しかし、その「過剰」さが独走してしまうのを、弟役のジェイク・ギレンホール、妻を演じるナタリー・ポートマン、父親役のサム・シェパードらが防いでいる図式ですかね。凄いです。
ナタリー・ポートマンが演じるグレースは、若いときは色々あったかもしれないが、結婚後は一筋に生きてきたような女性。夫の「死」が伝えられ、トミーが次第に心の支えになって行ったある日、彼にマリワナを薦められ、一瞬躊躇しながら、「わたしだって昔は、チアガールやってたし...」というようなセリフを言うときのさりげない変貌の演技は、ポートマンならではのもの。「破綻なく」生きてきた女性が、予想外の事態に直面し、追い詰められる女の演技も、流石と思わせるものでした。
長女のマギーの誕生パーティーでサムがキレるシーンが凄い。
次女のイザベルが、風船を手でギシギシ言わせはじめる。母親は注意をするが、彼女はきかない。すでに「普通」ではない表情のサムの表情がみるみるけわしくなっていく。そして、その場がある種の「破局」に向かって行く。特に、イザベル役の子が強烈な上手さの演技を見せるが、彼女だけでなく、すべての出演者が最高の演技を見せます。
ラスト、彼らは果たしてこの先うまくやっていけるのだろうか、という不安を残して終わります。もちろん、ここには『希望』もあるようにも映ります。だけど、この夫婦、もう元には戻れない気がします。また、元に戻らないほうが悪くない選択とも。そう思うのは、私だけでしょうか?
刑務所に服役する厄介者
兄は、妻を愛しこの上ない幸せな家庭を築いてきた。
だが、夫が戦場へ。
そして夫が戦死したとの報せを受けた。
何もかも失った残された家族を何気なく弟が世話をする。
そんなところに、夫が帰ってきた。
夫は戦場での拷問などでトラウマを受けている。
それぞれが複雑な心境に絡み合っており、いずれも戦禍ともいえる出来事を起因として、十分有り得るシチュエーションだといえます。
元通りのシアワセな家庭になるのか、崩壊するのか。
記憶の中に刻み込まれたことは、なかなか拭い去ることはできません。
この映画は、2004年のデンマーク映画「ある愛の風景」をアメリカ映画としてリメイクされたものです。
その原作は見ていませんが、この映画を見る限り、タイトルにあるような兄弟関係だけでは語りつくせないものがあり、また戦禍の社会問題として、夫婦間や家族を巻き込んだそれぞれの人生まで踏み込んだものと言えるかもしれません。
主演のトビー・マグワイアは、スパイダーマンシリーズではおなじみですが、この作品では異常な鬼気迫る重苦しい役柄を、おそらく減量までしてやり通したのではないかと思います。
ジェイク・ジレンホールは、ちょいワルの弟役でしたが、それよりも彼の持ち味とする優しさがよく表れています。
妻役のナタリー・ポートマンは、こういったナーバスなジャンルでの演技は初めてではないかと思います。
ナタリー・ポートマン
もう若手とはいえないのかもしれないけど、メインの3人の演技は安心してみていられます。
サムシェパード、子役たち、すばらしい演技でした。
トビーの豹変も、ジェイクの愛嬌も、端正なナタリーが覗かせるわずかな隙も。
リメイクとは知らなかったので比べようもありませんが。
自分にとって、よい戦争映画とは、観客に答えを押し付けていない作品。
余韻が残り、いつまでも自分の中で答えを探し続けてしまうような作品。
ハートロッカーもそうでしたが、ブラザーもそんな「よき戦争映画」でした。
サムは再生できるだろうか。誰にもわからないままテープは終わるけれど、戦争は続いている。
瑣末なことですが、某レビュアー様。
陸軍じゃありません、海兵隊ですよ。両者のステイツでの扱いはずいぶん違いますよ。