代表作『オールド・ボーイ』を含む「復讐3部作」などで世界中にその名を轟かせ、韓国映画界を牽引するパク・チャヌクが新たに放つ『渇き』は、実に10年越しという念願の企画を実現させた入魂作である。2009年カンヌ国際映画祭コンペティション部門での上映の際には、会場に居合わせたすべての観客を驚嘆させ、審査員賞を受賞。並外れた独創性を秘めた鬼才が、このうえなくセンセーショナルな新境地に踏み出した。
神父と人妻が堕ちていく〈血〉と〈官能〉に彩られた罪深き愛の物語 バンパイアは言わずと知れたヨーロッパ生まれの架空の魔物であり、数多くの小説や映画のモチーフになってきたが、パク・チャヌク監督が創造したバンパイアは、恐怖やファンタジーに重点が置かれがちなこのジャンルの枠を超越したテーマを探求している。
こともあろうにカトリックの神父が吸血鬼になってしまう意表を突いた導入部に続いて描かれるのは、抑圧された人生を送ってきた薄幸の人妻との禁断のラブ・ストーリーである。パク監督が、脚本を執筆するうえでインスパイアされたのは、フランスの文豪エミール・ゾラの「テレーズ・ラカン」。犯罪に手を染めた女の転落人生を描いたこの小説を、バンパイア神父の破滅的な愛の物語へと換骨奪胎したアイデアは特筆ものである。
韓国屈指の名優と新たなミューズが魅せる 男の切なさ、そして女の魔性のミステリー 異色の主人公サンヒョンを演じるのは、近作『グッド・バッド・ウィアード』での軽やかな暴れっぷりも記憶に新しいソン・ガンホ。パク監督のオファーに応え、体重を10キロ減量し見事に演じきった。バンパイアという超人めいたキャラクターに人間の弱さや切なさを吹き込んだ情緒豊かな演技は、韓国きっての実力派俳優ならではの離れ業といえよう。
カン・ヘジョン、イ・ヨンエを凌ぐほどのインパクトを放つテジュ役のキム・オクビンは、この映画最大の発見といっても差し支えない。女神と魔女を思わせるふたつの貌を持つヒロインに扮し、ソン・ガンホとの大胆露出も辞さないセックス・シーンをこなし、劇中でみるみる輝きを獲得していくその変わりようは、まさに新たなスター女優の誕生を予感させる。シッチェス・カタロニア国際映画祭では主演女優賞に輝いた。
そしてシン・ハギュンが、カメレオン俳優の面目躍如たる存在感でガンウ役を怪演。その母親であるラ夫人を演じるのは、ベテラン女優キム・ヘスクである。
予告編
ワーナー・マイカル・シネマズ劇場案内
ストーリー
謹厳実直なカトリックの神父サンヒョンは、病院で重病患者たちを看取ることに疲れ果て、自らの祈りが届かぬ現実に無力感を募らせていた。ただ人助けをしたいと願うサンヒョンは、アフリカの荒野にぽつんとたたずむ研究所を訪れる。この施設では人を死に至らしめる謎のウイルスに対するワクチンの極秘開発が進められていた。その実験に身を投じたサンヒョンは間もなく発病するのだが、正体不明の血液を輸血されて奇跡的な復活を果たす。
そんなある日、幼なじみのガンウと久しぶりに再会し、これをきっかけに彼らの家に出入りするようになったサンヒョンは、ガンウの妻テジュとめぐり合う。テジュはいかにも地味で無愛想な女だったが、あどけなさの中に不思議な色気をのぞかせ、自らを厳しく律するサンヒョンの心をかき乱していく。
聴覚や嗅覚が研ぎすまされ、太陽光を浴びられない体になったサンヒョンは、何と研究所での輸血の影響でバンパイアに変貌してしまう。サンヒョンには驚異的な治癒能力や、建物の屋根から屋根へと自在に移動できる跳躍力も備わっていた。
いつしかお互いを強く意識するようになったサンヒョンとテジュは、ある夜、ラ婦人の店の片隅で唇を貪るように求め合う。歪んだ日常に抑圧されてきたテジュも、猛烈なまでにサンヒョンに惹かれていた。
はや人の道を踏み外したふたりの行く手には、 知る由もない数奇な運命が待ち受けていた・・・。
スタッフ
- 監督・脚本・プロデューサー: パク・チャヌク
- 脚本: チョン・ソギョン
キャスト
- ソン・ガンホ
- キム・オクビン
- キム・ヘスク シン・ハギュン
- パク・インファン
- 他
DVD情報
関連リンク
主な上映劇場
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