1945年、夏。満州から引き上げてきた中学3年の日高康男(柄本佑)は空襲のショックで病となり、祖父(原田芳雄)の住む霧島で療養生活を送っていた。敗戦の影が静かに忍び寄る8月、日高家をはじめ、周囲の人々の生き様も少しずつ変化していく中、日々罪悪感を募らせる康男は、空襲で爆死した沖縄出身の親友の妹に会いに行くが…。
『竜馬暗殺』『TOMORROW 明日』などで知られる名匠・黒木和雄監督が自らの青春時代をモチーフに描いた戦時下人間ドラマの傑作。霧島を舞台に、終戦間際の人々が織り成す集団劇という構図をとりながら、戦争の狂気が静かに淡々と、しかし次第に濃密に奏でられていき、やがては神と人の関係性や、その中で思春期を迎えた少年の狂騒までもがしかと捉えられていく。日本映画界の底力を否応なしに見せ付けられる見事な“映画”である。2003年度キネマ旬報ベスト・テン第1位。また、柄本明の実子でもある主演の柄本佑は、本作でその年の新人賞を総なめした。
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