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取材・文:内田涼 写真:高野広美 (by シネマトゥデイ)
『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』の矢口史靖監督が航空業界をテーマに、約2年間の徹底リサーチを経て完成させた最新作『ハッピーフライト』がついに“就航”する。安全とサービスを追求するスタッフたちの知られざる奮闘を描いた同作で、機長昇進を間近に控えた副操縦士を演じた田辺誠一と、国際線デビューを果たす新米キャビンアテンダント役の綾瀬はるかに、作品の見どころや航空業界にまつわる新たな発見について話を聞いた。
■役作りのために徹底的なトレーニング Q:まずはパイロット、そしてキャビンアテンダントの制服に身を包んだ感想から教えてください。 田辺:やっぱりその気になりますよ。「パイロットなんだ」って実感がわきますね。 綾瀬:意外にカチッとしているので、気持ちがピッと引き締まって……肩がこります(笑)。 Q:お互いの制服姿をご覧になって、どんな感想をお持ちですか? 田辺:いやー、もう似合っていますよね。かわいらしいです!! 綾瀬:田辺さんもすっごく似合っていますよ! Q:お二人とも撮影に入る前にそれぞれ研修を受けたそうですね。 田辺:パイロットの方々が受けるのと同じ研修がありました。午前中に学科4時間、午後からはフライトシミュレーターでの訓練がまた4時間。シミュレーターは楽しかったですけど、学科はね……キツかったですよ(笑)。研修を受けたのは全部で4日間でしたが、その後も分厚いマニュアルをお借りして家で予習復習しました。 綾瀬:わたしも3日間、授業を受けたり、実際の機内でサービスを教えていただいたりしました。視線を集める職業なので、制服を着ているときは仕事中だけでなく、通勤途中でも「人に見られている意識を忘れないように」と言われたのが印象的でしたね。 Q:そのほかに研修を通して、今まで知らなかったことや、意外な発見はありましたか? 綾瀬:お客さまに何かを手渡すときは必ず両手を使うんです。それに機内の照明が暗いときもしっかり笑顔が目立つように、キャビンアテンダントのメークは結構濃い目なんです。緊急時にはサービス以上に保安要員としての役目が大きくて、時にはお客様に対しビシッとした態度を取らなくてはいけないこともあるそうです。 田辺:僕自身もパイロットという仕事の奥の深さ、責任の大きさは強く実感しましたね。 |
■映画を通じて新たな発見! Q:航空業界を描いた『ハッピーフライト』。専門用語もたくさん飛び交いますが、セリフを覚えるのは大変だったのでは? 田辺:そうですね。知らない用語などもたくさん出てくるので、まずはそれを調べたり、教えてもらったり。その上で理解しながらセリフを覚えるので、普段より大変でしたね。なるべくリアルなパイロット像に近づくよう努力しました。 綾瀬:セリフの覚え方という点では普段と変わりませんでしたが、台本のところどころに用語の説明が書いてあったので、それはとても参考になりました。 Q:今回はANAの全面協力を得て、実際のジャンボジェット機を使った撮影も実現しましたね。 田辺:実物を間近で見ると、やはり迫力がありますね。映像的にもストーリーにも、スケールがより大きなものに仕上がったのは、本物のジェット機のおかげだと思います。機体そのものもどんどん進化していますからね、かっこいいですよ! 男子のロマンというか。 綾瀬:セットと違って、奥の方に長いんです。わたしはエコノミーシート担当だったので、あの細長い通路を通ってたくさんの荷物を運ぶのが大変でした。それに実際の機内なので、換気ができないんですね。照明もついた状態だったので、わたしも含めて皆さん暑さをガマンしていたことを思い出します。 |
■先輩俳優との共演に緊張!? Q:今回、少し三枚目な副操縦士を演じた田辺さんはほとんどのシーンで、機長役の時任三郎さんと狭い操縦席でご一緒でしたね。 田辺:確かに少しおっちょこちょいな役柄ですが「あまりに頼りないのも副操縦士としてどうかな」っていうバランスは演じる上で気を遣いましたね。時任さんとは初めてお仕事させていただいたんですが、普段、お家に遊びに行くなどお付き合いがあるので、映画で描かれているようなピリピリした雰囲気ではなかったですよ。でもパイロットの方々が、狭い空間の中で気を遣うだろうというのはわかりました。 Q:綾瀬さんは国際線デビューを果たすキャビンアテンダント役として、寺島しのぶさんや吹石一恵さん演じる先輩たちに怒られるシーンもありますね。 綾瀬:寺島さんによく怒鳴られていたので「こわいなぁ……」って。もちろん役柄としてですけど(笑)。でも、いろいろなピンチが起こる中で助け合って、最後は同じ仕事をするキャビンアテンダントとしてきずなが生まれるんです。現場の雰囲気もそれに似た感じで、共演した皆さんと団結できたと思います。 Q:お二人とも矢口監督とは初めてのお仕事でしたね。印象に残っている演出やアドバイスなどはありましたか? 田辺:特にキャラクターの感情については、例え話で説明してくれましたね。機体に雷が落ちて大きく揺れるシーンなんかは「ジェットコースターに乗っている気分で」といった感じで。それにちょっと情けない表情を演じるときに「西田敏行さん風に」って指示もありましたね(笑)。 綾瀬:わたしの場合は、現場で最初にお会いしたとき「悦子はちょっと変な女の子なので、いっぱい変な顔をしてもらいます」って監督がおっしゃったんです。撮影中も、顔の表情についてかなり細かい指示が出ましたね。「目をもうちょっとだけ丸く」とか、「もっとグシャッて鼻の穴を広げる感じで」とかとにかく細かくて(笑)。 Q:乗客を演じる笹野高史さんのカツラをこっそり直すシーンが最高です! 綾瀬:あのシーンでも矢口監督はカツラの向きやズレ加減にすごくこだわって「もう少しだけこっちにズラして」みたいなやりとりが何度もあったんですよ。笹野さんは寝ているという設定なので、ノーリアクションで。それがまたおかしかったですけどね(笑)。 |
■プライベートで経験した飛行機エピソード Q:ところでお二人は空港や飛行機を利用する機会も多いと思いますが、何か思い出に残るエピソードがあれば教えていただけますか? 田辺:若いころは窓の外の景色を見て「地図の上では国境があるけど、空から見ると線なんて引いていないのになあ、みんなつながっているのになあ」と考えていました。ハプニング的な経験はありません。 綾瀬:写真集の撮影で石垣島に着陸しようとしたら、横風が強く、タッチ・アンド・ゴー(連続離着陸訓練)のような感じで着陸に2回チャレンジしたことがあります。 Q:最後に公開を楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。 田辺:飛行機にかかわるあらゆる人たちの情熱がぎっしり詰まっている、面白くてちょっと感動できる映画に仕上がったと思うので、ぜひご覧ください。 綾瀬:飛行機を無事に飛ばそうと、いろんな部署の人たちが一致団結する姿が描かれた、たくさんの感動が詰まった作品だと思いますね。きっと楽しんでいただけると思います。 |
劇中の衣装でインタビューに応えてくれた田辺と綾瀬の二人は、新たな発見の連続となった本作の撮影を心から楽しんだと同時に、航空業界で働く人たちの苦労を知ることで改めて尊敬の気持ちが芽生えたそうだ。矢口監督らしいユーモアとこだわりが詰まった『ハッピーフライト』は作品のスケールもジャンボ級。ぜひ劇場の大きなスクリーンで、登場人物たちの汗と涙、そして責任と情熱に触れてほしいハッピーなエンターテインメント大作だ。
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